ロレックスのアンティークモデルを購入しようと考えたとき、多くの人が一番最初にぶつかる壁が、本物かどうかの判断ではないでしょうか?
市場にはスーパーコピーと呼ばれる精巧な偽物や改造品が出回っており、そのクオリティは年々上がっています。
私自身も最初は、古い時計特有の個体差なのか、それとも偽造品による粗悪な作りなのか、その違いや比較ができずに悩んだ経験があります。
特に高額なヴィンテージモデルとなると
失敗したときのリスクを考えて足踏みしてしまいますよね。
この記事では、そんな不安を少しでも解消できるように、専門的な知識がなくてもチェックできる査定のポイントや、プロが実践している見分け方のコツを分かりやすく解説していきます。
- 外装の形状や刻印から年代に合った正しい特徴を見極められます
- 文字盤や夜光塗料の経年変化に潜む不自然なサインを発見できます
- ムーブメントやブレスレットの構造から決定的な真贋判定を行えます
- 付属品の整合性を確認し個体全体の信頼性を判断する力が身につきます
外装でロレックスアンティークの偽物を見分ける方
アンティークロレックスの魅力はその美しい外装にありますが、実はここに真贋を見極めるためのヒントが数多く隠されています。
現代の精密な工作機械で作られた偽物と、当時の職人の手作業や経年変化を経た本物とでは、細部の「質感」に決定的な違いが現れるのです。
現代のスーパーコピーは、パッと見ただけではプロでも唸るほどの完成度を持っていますが、やはりコストの壁や製造工程の違いから、どうしても再現しきれない「違和感」が残ります。
それは金属の光沢感であったり、エッジの鋭さであったり、あるいは指で触れたときの温度感のようなものかもしれません。
まずは誰でもチェックできる外側のアプローチから、その違和感の正体を暴くためのポイントを詳しく見ていきましょう。
王冠透かしや風防の仕様で見抜く真贋

ロレックスの真贋判定において、インターネットや雑誌で最もよく取り上げられる有名な特徴の一つが、風防(ガラス)の6時位置にある「王冠透かし(LEC: Laser Etched Coronet)」ではないでしょうか?
「私の持っている古いエクスプローラーには透かしがない!偽物だ!」と焦ってしまう方がいらっしゃいますが、実はその判断は少し早すぎるかもしれません。
まず歴史的な事実として、ロレックスがこの王冠透かしを導入したのは1999年頃のヨットマスター(Ref.16622)が最初です。
その後、2000年のデイトナ(Ref.116520)、2001年のエクスプローラーI(Ref.114270)といった具合に、数年かけて徐々に全モデルへと波及していきました。
つまり、1990年代以前に製造されたアンティークモデル(4桁や5桁リファレンスの初期)のオリジナル風防に、王冠透かしが入っていることは年代的にあり得ないのです。
もし1970年代のモデルで、当時のオリジナルのプラスチック風防が付いているはずなのに王冠透かしが見えたとしたら、それは間違いなく偽物の風防であるか、あるいは何らかの誤った知識で作られた改造品ということになります。
ここで一つ注意が必要なのは「透かしがあるからといって、即座に偽物だと決めつけてはいけない」という例外的なケースです。
アンティークモデルであっても、長年の使用の間に風防が割れたり傷ついたりして、日本ロレックスなどの正規サービスセンター(RSC)でオーバーホールを受けた場合、新しいサファイアクリスタル(サービスパーツ)に交換されることがあります。
この「正規の交換用風防」には、実は王冠透かしが入っていることが多いのです。
ただし、オリジナルの透かしとは異なり、透かしの中にある王冠マークの横に、小さく「S」という文字が刻印されていることがあります。
これは「Service(サービス)」を意味し、メーカーによって正規に交換された真正品であることの証左となります。
この知識がないと、せっかくメーカーでメンテナンスされた極上の個体を偽物と勘違いしてしまう恐れがあります。
また、透かしの「見え方」そのものにも、本物と偽物には大きな差があります。
本物の王冠透かしは、偽造防止のために極めて微細なドット(点)の集合体としてレーザー刻印されています。
その精巧さは、肉眼ではほとんど確認できないほどです。
強い光を当てて角度を変えたり、背景を黒くしたりして、ようやくルーペで「うっすらと見える」というレベルが本物の証です。
一方で、多くの偽造品や社外製の風防に入っている透かしは、肉眼でもハッキリと白く見えるほど主張が激しいものが大半です。線が太く、ドットではなく実線で描かれていたり、王冠の形状がいびつだったりします。
リューズの形状と巻き心地による真贋判定

時計の中で唯一、私たちが日常的に指で触れて操作するパーツであるリューズ(Winding Crown)
ここは視覚だけでなく触覚を使っても真贋を判断できる、非常に重要なポイントです。
ロレックスの操作感は、まさに「精密機械」そのものであり
その感触を完全にコピーすることは至難の業だからです。
まず視覚的なチェックポイントとして、リューズ側面の王冠マーク(コロネット)の立体感に注目してください。
本物のロレックスのリューズは、王冠のマークが非常に高く盛り上がっており、指の腹でなぞるとその凹凸がクッキリと分かります。王冠の5本の指の先端にある球体も、きれいな丸みを帯びています。
これに対して偽物のリューズは、製造コストを下げるためにプレスの圧力が弱かったり、金型が甘かったりするため、全体的にのっぺりとした平坦な印象を受けます。
王冠の指が不自然に太かったり、あるいは細すぎて折れそうに見えたりするものも少なくありません。
また、王冠の下にある「ドット(・)」や「バー(-)」の表記も重要です。
これはケースの素材(SS、金無垢、プラチナ)や防水性能(ツインロック、トリプロック)を示す記号であり、モデルのスペックと矛盾していないかを確認する必要があります。
見た目以上に決定的なのが、実際にリューズを操作した時の「巻き心地」です。ここにロレックスの品質への執念が現れます。
- ねじ込みの解除:反時計回りに回してねじ込みを解除した瞬間、本物は内部のスプリングの力で「ポンッ」と軽快にリューズが飛び出します。偽物はこのバネの力が弱く、ヌルっと出てくることが多いです。
- ゼンマイの巻き上げ:指でリューズを回してゼンマイを巻く際、本物は「キチキチキチ…」という、非常に緻密で高周波なクリック感(クリシェ音)が指先に伝わります。適度な抵抗感がありながらも、回転は滑らかです。
- 偽物の感触:偽物は内部のギアやリューズチューブの加工精度が低いため、回すと「ジャリジャリ」「ガリガリ」といった、まるで砂を噛んでいるような不快な感触や異音がすることがあります。また、針回しモードに引いた時のガタつき(遊び)が大きく、グラグラするのも偽物の特徴です。
この「指先に伝わる精密感」ばかりは、写真や動画では決して伝わらない部分です。
もし可能であれば、信頼できるお店で本物のアンティークロレックスを触らせてもらい、その感触を指に覚え込ませておくことをお勧めします。
一度本物の心地よい感触を知ってしまえば、粗悪な偽物を触った瞬間に「あれ?何かおかしい」と本能的に違和感を感じ取れるようになるはずです。
ケースの刻印とラグの処理をチェックする

ブレスレットを外さないと見ることができない、ケース側面(12時位置と6時位置)のラグ間にある刻印。
ここを見るためにはバネ棒を外すという手間がかかりますが、それだけに真贋判定においてはプロも必ずチェックする「聖域」のような場所です。
アンティーク時代のロレックスは、現在のレーザー刻印とは異なり、パントグラフなどの機械彫りや、強力な打刻によってリファレンスナンバー(型番)とシリアルナンバー(固有番号)を刻んでいました。
そのため、本物の刻印は非常に深く、文字の断面のエッジが鋭く立っているのが特徴です。
10倍以上のルーペで覗き込んで光を当てると、刻印の底面が金属を押し出したような滑らかな質感をしており、文字の壁面がキラキラとダイヤモンドのように輝いて見えることがあります。
一方で、コストダウンされた偽物や近年のコピー品は、レーザー刻印や酸によるエッチングを用いていることが多く、文字の溝が浅かったり、底面がザラザラとした焦げ跡のような質感(サンドブラスト状)になっていたりします。
また、文字の輪郭が点描画のようにボヤけて見えるのも、レーザー刻印特有の特徴です。
ロレックスの刻印には、年代ごとに独特のフォントが使われています。
例えば、数字の「3」の上部が平らになっている「フラットトップ3」や「R」の足の跳ね方などに特徴があります。
偽物は一般的なゴシック体を使用していることが多く、文字の間隔(カーニング)が不均一だったり「ORIG ROLEX DESIGN」という単語間のスペースが詰まりすぎていたりと、全体的なバランスの悪さが目立ちます。
また、ケースの足部分である「ラグ」の形状や処理も重要です。本物のオイスターケースは、鍛造によって作られた高密度のステンレススチールを削り出して成形されており、エッジが非常にシャープです。
特に「面取り(チャンファー)」と呼ばれるラグの角を斜めにカットした仕上げは、アンティークロレックスの美しさの象徴でもあります。
偽物はケースの成型技術が低いため、全体的に「ボテッとした」丸みを帯びた形状をしており
ラグの先端に向かうラインにキレがありません。
もちろん、本物であっても過去の研磨(ポリッシュ)によって丸くなってしまっている個体はありますが、偽物の丸みは「研磨による痩せ」ではなく「最初からの形状不良」によるものであり、金属の質感や光の反射の歪み方が異なります。
使い込まれて傷だらけでも、本物のケースには一種のオーラのような重厚感が漂っているものです。
文字盤のフォントと夜光塗料の経年変化

アンティークロレックスの顔とも言える文字盤(ダイアル)。市場価値を最も左右するパーツだけに、偽造技術も最も進化している激戦区です。
まず文字の印刷品質を見てみましょう。
ロレックスの文字盤印刷は、パッド印刷やガルバニック(メッキ)技法など年代によって異なりますが、一貫しているのはその圧倒的な精度です。
本物はインクが適度に盛り上がり、拡大鏡で見ても「ROLEX」や「OYSTER PERPETUAL」の文字のエッジが驚くほどシャープです。
対して、偽物や質の悪いリダン(書き直し)文字盤は、版の精度が低いため、インクがのっぺりと平坦であったり、文字の縁がギザギザに滲んでいたり(ブリーディング)します。
特に王冠マーク(コロネット)の形状は、偽物が見落としやすいポイントです。
本物の王冠は左右対称で優美な曲線を描いていますが、偽物は指の太さがバラバラだったり、王冠の下の楕円形(口)の開き具合が極端に狭かったりします。
そして、最も分かりやすく、かつ科学的に判別できるのが夜光塗料の反応です。
- トリチウム(~1998年頃):アンティークロレックスの多くに使用されていた放射性物質を含む塗料です。文字盤には「T SWISS T」や「T<25」と表記されています。トリチウムは半減期が短いため、製造から20年以上経過した現在では、自発光能力をほぼ失っています。ブラックライト(UV)を当てると、塗料に含まれる蛍光物質が反応して一時的に光りますが、ライトを消すと「スッ」と瞬時に光が消えます。
- ルミノバ(1998年~):光を蓄えて強く発光する蓄光塗料です。UVライトを消した後も、明るい緑色や青色に長時間光り続けます。
- 偽物・リダンの兆候:もしあなたの手元にある時計が「T SWISS T(トリチウム表記)」の文字盤であるにもかかわらず、ブラックライトを消した後も現代の時計のようにギンギンに光り続けているとしたら…それは残念ながら、「トリチウム表記の偽造文字盤」であるか、あるいは「オリジナルの上からルミノバ夜光を塗り直したリダン品」である可能性が極めて高いです。
このように、文字盤に書かれている表記と、実際の物理的な反応(光り方)の整合性を確認することで、多くの偽物や改造品を見抜くことができます。
アンティークウォッチを見に行く際は、小さなブラックライトをポケットに忍ばせておくのが、賢いコレクターの嗜みと言えるでしょう。
針の動きと秒針の挙動で偽物を判別する
最後に、時計としての基本動作である「針の動き」を確認しましょう。
ここは静止画では分からない、動画的なチェックポイントです。
ロレックスのムーブメントが高精度である証は
その秒針の動きに現れます。
機械式のロレックスは、テンプが1秒間に5回~8回振動することで時を刻みます。
そのため、秒針は「チチチチ…」と小刻みに振動しながら、滑らかに流れるように動く「スイープ運針」となります。
特にハイビート(28,800振動/時)化された1970年代後半以降のモデルでは、その動きは非常にスムーズです。
もし、あなたが手に取ったロレックスの秒針が「チッ、チッ、チッ」と1秒ごとに止まる「ステップ運針」をしていたら、それはどういうことでしょうか?
それは、内部に安価な電池式のクォーツムーブメントが搭載されていることを意味します。
つまり、外側だけロレックスを模した、典型的な安物のコピー品である可能性が極めて高いのです。
ただし、ここで一つだけ重要な例外があります。
ロレックスには1970年代の「クォーツショック」に対抗して作られた「オイスタークォーツ(Oysterquartz)」という正規のクォーツモデル(Ref.17000系など)が存在します。
このモデルに限っては、本物であっても1秒ごとのステップ運針を行い、しかもその音は「カシャッ、カシャッ」と非常に大きく独特です。
しかし、これはケース形状も角張った特殊なデザインをしており、一般的なサブマリーナーやデイトジャストとは見た目が大きく異なります。
もし、普通の丸いオイスターケースの自動巻きモデル(とされているもの)でステップ運針をしていたら、それは間違いなくアウトと判断して良いでしょう。
また、針そのものの仕上げも見逃せません。本物の針は、側面まで綺麗に磨き上げられており、バリ(金属の削り残し)がありません。
夜光塗料の色味も、文字盤のインデックスの夜光と均一に焼けて(変色して)いるのが理想的なオリジナル状態です。
もし文字盤はクリーム色に焼けているのに、針の夜光だけが真っ白で新しかったり、逆に針だけが汚かったりする場合は、過去に針だけ交換された(ハック合わせ)可能性があります。
これは偽物ではありませんが、オリジナリティという点では評価が下がるポイントになります。
内部機構からロレックスアンティークの偽物を見分ける方
外装がいかに精巧なスーパーコピーであっても、時計の心臓部であるムーブメントまでを完全に、しかも高精度にコピーすることは、コストと技術の面で非常に高いハードルがあります。
そのため、裏蓋を開けて内部の機械(キャリバー)を確認することは、真贋判定における「最終手段」にして「最強の方法」と言えます。
もちろん、お店で勝手に裏蓋を開けることはできませんが、購入後にメンテナンスに出す際や、保証付きの店舗で内部を見せてもらえる場合には、ここでの知識が役立ちます。
少しマニアックな世界になりますが、知っておいて損はない決定的な内部の特徴について解説します。
ムーブメントのキャリバーと音を確認する

アンティークロレックスの名機とされる自動巻きムーブメント「Cal.1570」(1960~70年代の傑作)や「Cal.3035」(1970~80年代のハイビート機)には、偽物が容易に真似できない構造的な特徴があります。
その最大の見極めポイントは、テンプ(Balance Wheel)周辺の構造にあります。
一般的な機械式時計や、多くの偽物に使われている汎用ムーブメント(ETA社製など)には、時間の進み遅れを調整するための「緩急針(レギュレーター)」と呼ばれるレバーがテンプの上に付いています。
ヒゲゼンマイの有効長を変えて速度を調整する仕組みです。
しかし、ロレックスのムーブメントは「フリースプラング」という、より高度で調整が難しい方式を採用しています。
緩急針を持たず、その代わりに天輪(テンプの輪)に付いている「マイクロステラナット」と呼ばれる小さな星形のネジを回し、慣性モーメントを変えることで時間を調整します。
つまり、裏蓋を開けてムーブメントを見たとき、テンプ受けの上に長いヒゲのようなレバー(緩急針)があれば、それはロレックスの純正ムーブメントではありません。
これは非常に分かりやすい判別点です。
また、ムーブメント全体の仕上げの美しさも別格です。
本物は、ブリッジやプレートの表面に「ペルラージュ」と呼ばれる鱗模様や「サンバースト」のような放射状の装飾研磨が施されており、パーツの角も丁寧に面取りされています。
さらに、自動巻き機構の「リバーシングホイール(切替車)」が、摩擦を減らすために鮮やかな赤色(テフロン加工)や濃い赤紫色になっているのも、この時代のロレックス特有の特徴です。
これに対して偽物のムーブメントは、全体的に金属の表面が粗く、切削痕が残っていたり、刻印の金色の塗料が安っぽかったりします。ネジの頭も磨かれておらず、平らなままのことが多いです。
本物の自動巻きローターは、回転効率が良くベアリングの精度も高いため、回転音は非常に静かでスムーズです。耳を澄ませても「サーッ」という微かな音がする程度です。
しかし、偽物はベアリングの品質が悪くガタつきがあるため、時計を振ると「シャーシャー」「ガラガラ」という大きな異音が鳴り響き、手首に不快な振動が伝わってくることがあります。静寂の中にこそ、本物の品質は宿るのです。
ブレスレットとバックルの年代整合性

時計本体だけでなく、ブレスレットにも時代ごとの明確な特徴があります。
ブレスレットは消耗品であるため、長い歴史の中で交換されていることも多いですが、本体の製造年代とブレスレットの仕様が合っているか(年代整合性)を確認することは、その個体のオリジナリティを知る上で非常に重要です。
特に1950年代~60年代のアンティークモデルに見られる「リベットブレス」は、偽物が見落としがちな構造的特徴を持っています。
リベットブレスとは、コマの側面に鋲(リベット)の頭が出ているデザインのブレスレットのことですが、本物のリベットブレスは、ステンレスの板を折り曲げて作った「中空(Hollow)構造」になっています。
そのため、現代の無垢(Solid)ブレスレットに慣れた人が持つと、驚くほど「軽い」と感じるはずです。
時計を振ると「シャラシャラ」という、乾いた軽い金属音がします。
これを「安っぽい」と感じるか、「ヴィンテージ特有の味」と感じるかは人それぞれですが、真贋判定においては重要な要素です。
現代の技術で作られた偽物のリベットブレスは、コストや耐久性を優先して無垢材(中身が詰まった金属)を使用していることが多く、持った瞬間にズシリと重く、振ってもあの軽やかな音がしません。
また、少しマニアックですが「USAブレス」の存在も知っておくと良いでしょう。
ロレックスは過去、輸入関税を回避するために、アメリカ国内のC&I社などでブレスレットを現地生産させていました。
このUSA製リベットブレスは、スイス製とはリベットの形状が異なり、中空部分がより大きいなどの特徴があります。
バックルに「U.S.A.」の刻印があれば、それは偽物ではなく、北米市場向けの正当なヴィンテージパーツです。
こうした知識がないと、本物のUSAブレスを見て「作りが違うから偽物だ」と誤判断してしまう恐れがありますよ。
クラスプコードで製造年との一致を調べる
ブレスレットのバックル(クラスプ)の内側プレートには、ロレックスのロゴと共に、アルファベットと数字の組み合わせが刻印されています。
これを「クラスプコード」と呼び、ブレスレットの製造年月を表す暗号となっています。
このコードを読み解くことで、時計本体の製造年(シリアルナンバーから推測)と、ブレスレットの製造時期が合っているかという「答え合わせ」ができます。
| コード | 製造年(目安) |
|---|---|
| A / VA | 1976年 |
| E / VE | 1980年 |
| J | 1985年 |
| O | 1990年 |
| W | 1995年 |
| AB | 2000年 |
※上記は一部の代表的な例です。コードの右横の数字は製造月を表します(例:G4=1982年4月製造)。
例えば、時計本体のシリアルナンバーが1980年製を示しているのに、ブレスレットのクラスプコードが「S」や「W」(1994年~1995年頃)だった場合、それは「後から新しいブレスレットに交換された」ということが分かります。
これは偽物ではありませんが「フルオリジナル」ではないため、コレクター市場での評価額は少し変わってきます。
また、クラスプコードの末尾に「S」という文字が刻印されている場合があります(例:MA5 S)。
これは前述の風防と同じく「Service(サービス)」を意味し、日本ロレックスなどの正規店で交換用として出された「サービスブレス」であることを示しています。
サービスブレスは機能的には新品同様で素晴らしいものですが、ヴィンテージとしての価値という点では、当時のオリジナルブレスよりも一段下がると見なされるのが一般的です。
このように、コード一つでその時計が辿ってきた歴史やメンテナンスの履歴を読み取ることができるのです。
保証書の紙質や記載内容から真贋を判断
時計本体だけでなく「紙」の付属品も真贋判定の重要な要素です。
特に保証書(ギャランティペーパー)は、アンティークロレックスにおいて「ある」と「ない」では数十万円、モデルによっては百万円単位で価格が変わるほどの影響力を持ちます。
それゆえに、保証書自体の偽造も横行しており、注意が必要です。
現代のプラスチックカードとは異なり、アンティーク時代の保証書は紙製でした。
中でも信頼性が高いとされるのが、シリアルナンバーと国番号が小さな穴(パンチング)で開けられている「パンチングギャランティ」です。
1970年代から2000年代中頃まで使用されました。
パンチングの真贋を見分けるポイントは、穴の「断面」です。
本物のパンチングは専用の機械で一瞬にして穴を開けるため、穴の断面が非常に鋭利で、紙の繊維がスパッと切れています。
一方で、偽造品は精度の低い機械や針のようなもので穴を開けているため、穴の縁が盛り上がっていたり、紙の繊維が潰れてボサボサになっていたりします。
また、穴の位置や間隔が不均一なのも偽物の特徴です。
一方で、1970年代以前や一部の地域で一般的だった「手書きギャランティ」は、より慎重な判断が求められます。
ブランク(空白)の用紙さえ手に入れば、誰でも好きなシリアルナンバーを書き込めてしまうからです。
ここでは、インクの経年劣化具合や、販売店のスタンプの信憑性、筆跡の自然さなどを総合的に見る必要があります。
さらに、保証書に記載されている3桁の数字「クライアントコード(国番号)」も重要です。
「410」なら日本、「710」ならアメリカ、「888」なら香港など、その時計が最初に出荷された国を示しています。
例えば、時計が「アメリカから買い付けた個体」として売られているのに、保証書の国番号が「香港」だった場合、その矛盾には何らかの理由(並行輸入など)があるはずです。
そのストーリーに無理がないかを確認することも、真贋判定の一つと言えるでしょう。
付属品の箱や冊子の質感で見極める方法

最後に、意外とあなどれないのが「箱(ボックス)」や冊子などの付属品です。
「箱なんてただの入れ物でしょう?」と思われるかもしれませんが、ヴィンテージの世界では、当時のオリジナルの箱(内箱・外箱)だけでも数万円で取引される価値あるアイテムです。
そして、ここにも偽物が大量に存在します。
実は
ここで役立つのが五感の一つである「嗅覚」です。
数十年経過した本物のヴィンテージボックスは、長い時間を経て、古書のような懐かしい匂いや、枯れた古い革独特の匂いがします。
しかし、最近作られた中国製などのレプリカボックスは、素材や接着剤が新しいため、強烈な化学的な接着剤の匂いや、ゴムや石油のような酸っぱい悪臭がすることがあります。
箱を開けた瞬間に「ツン」とする刺激臭がしたら、その箱は後から付けられた偽物である可能性が高いです。
また、箱のデザインにも年代ごとの特徴があります。
例えば1970年代以前の箱には、蓋の裏や外箱にタツノオトシゴ(シーホース)の刺繍やプリントが施された「シーホースボックス」や、表面が凸凹した「クレーターボックス」などがあり、これらはコレクターアイテムとして非常に人気があります。
本物の箱は、たとえ経年劣化していても、木材の枠組みがしっかりしており、内装のベルベットやクッションの縫製も丁寧です。
偽物は角の接着が雑で隙間があったり、王冠ロゴのプリントが滲んでいたりと、全体的に作りが粗雑です
総括:ロレックスアンティークの偽物を見分ける方法
ここまで、ロレックスアンティークの偽物を見分ける方について、外装の微細な特徴から内部ムーブメントの構造、そして付属品の匂いに至るまで、私の視点を交えて詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
真贋判定において最も重要なことは、木を見て森を見ずにならないこと、つまり一つのポイントだけで白黒をつけるのではなく「個体全体の年代的な整合性(Period Correctness)」を確認することです。
「文字盤は古いはずなのに夜光だけ新しく光る」
「シリアルは70年代なのにブレスレットは90年代製」
「保証書の国番号と入手ルートが矛盾している」…
こうした小さな「違和感」や「矛盾」の積み重ねこそが、偽物やツギハギの改造品を見抜く最大の鍵となります。
もちろん、これらはあくまでご自身で時計選びを楽しむための知識であり、最近のスーパーコピーの進化は目を見張るものがあります。
中には本物のパーツと偽物のパーツを巧みに組み合わせた「フランケンウォッチ」と呼ばれる悪質な個体も存在します。
消費者庁や特許庁も模倣品対策に力を入れていますが、最終的に自分の身を守るのは自分自身の知識と、誰から買うかという判断です。
政府も模倣品の購入防止を強く呼びかけています。
偽物を買うことは犯罪組織の資金源になるだけでなく、自分自身が詐欺被害に遭うリスクも高まります。
(出典:経済産業省 特許庁『絶対買わんぞ!コピー商品』)
だからこそ、アンティークロレックスを購入する際の最大のリスクヘッジは「Buy the Seller(時計ではなく売り手を買え)」という格言に集約されます。
どれほど安くても、怪しい個人売買や評価の低い店には手を出さず、万が一の際の保証(返金保証や永久保証)をしっかり提供してくれる、信頼できる専門店やディーラーを選ぶことが、あなたの貴重な資産を守る唯一の道です。
この記事が、あなたが本物のロレックスアンティークという素晴らしい相棒と巡り会い、その歴史と物語を安心して楽しめる一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
なお、各モデルの正確なスペック等はロレックス公式サイト等でもご確認ください。
また、最終的な真贋判断については、迷わず信頼できる専門家にご相談されることを強くおすすめします。


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