パテック フィリップ エリプスについて情報を集めていると、その独特な楕円形のデザインやブランドの歴史に強く惹かれる方は多いのではないでしょうか?
スポーツモデルのノーチラスやアクアノートが市場で高騰する一方で、このエリプスこそが真のパテック好きが辿り着く時計だと評価する声もよく耳にします。
中古市場での価格推移や現行モデルとの違い、さらにはレディースモデルのサイズ感など、購入を検討する上で知っておきたいポイントは意外と多いものです。
今回は、個人的にもいつかは手元に置きたいと考えているこの「黄金の楕円」について、私なりの視点で詳しく掘り下げてみたいと思います。
- 黄金比に基づいたデザインの美しさと歴史的背景
- 定番モデルRef.3738や現行モデルの市場評価
- 中古市場における資産価値と価格動向の分析
- 購入前に知っておくべき防水性やメンテナンスの注意点
パテック フィリップ エリプスの歴史と魅力

パテック フィリップといえばノーチラスなどのスポーツモデルが話題になりがちですが、1968年の誕生以来、ブランドの美学を最も純粋に体現しているのは、実はこの「ゴールデン・エリプス」かもしれません。
ここでは、なぜこの時計が半世紀以上も形を変えずに愛され続けているのか?
そのデザインの秘密と歴史的な背景について、私自身の感想と共に見ていきましょう。
黄金比が生み出すデザインの歴史

エリプスを語る上で絶対に外せないのが、その名の由来でもある「黄金比(ゴールデン・レシオ)」の存在です。
この時計のケースデザインは、単にデザイナーの感性だけで決められたものではありません。
古代ギリシャの時代から建築や美術の分野で「神聖なる比率(Divine Proportion)」として崇められてきた
「1:1.6181」という数学的な黄金分割に基づいています。
1968年クォーツショックの前夜という激動の時代に、パテック フィリップはこの黄金比を厳密に適用した時計を発表しました。
当時のキャッチコピーが「The Non-Watch(時計ではない時計)」だったことからも、ブランドがいかにこのモデルを「単なる計測機器」ではなく「手首に纏う芸術作品」として位置づけていたかが分かります。
円形でも長方形でもない、けれど不思議なほど人間の感性に心地よく響くこの楕円形は
パルテノン神殿やレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画にも通じる普遍的な美しさを持っています。
流行の移り変わりが激しい時計業界において、50年以上も基本的なフォルムを変えずに生産され続けているモデルは稀有です。
それは、この形状が一時的なトレンドではなく、人間が本能的に美しいと感じる数学的真理に基づいているからこそ、時代による陳腐化(obsolescence)を免れているのだと思います。
初期のモデルや現行品を含め、エリプスの多くのモデルは、ベルトを取り付ける「ラグ」をケースの裏側に隠すか、極めて目立たないように設計しています。
これは、黄金比によって導き出された完璧な楕円のシルエットを、ラグの突起で邪魔しないための「引き算の美学」です。
時計本体がベルトの上に浮遊しているかのような視覚効果は、緻密な計算の上に成り立っています。
中古市場で人気のRef.3738とは
エリプスの長い歴史の中で、最も象徴的であり、かつ市場でよく見かけるロングセラーモデルが「Ref.3738」です。
このモデルは1978年から2009年頃まで、なんと30年以上もの長きにわたって製造され続けました。
一つのリファレンスがこれほど長く続くこと自体が、完成度の高さを物語っていますよね。
Ref.3738の最大の特徴は、31.1mm × 35.6mmという絶妙なサイズ感にあります。
発売当時は「ジャンボ」と呼ばれたサイズですが、現代の巨大化した時計市場においては、非常に上品でクラシックなドレスウォッチのサイズとして再評価されています。
中古市場では流通数が比較的多く、自分好みの個体を探しやすいのも魅力です。
ただし、30年という長い製造期間の中でマイナーチェンジが繰り返されており、文字盤の「σ(シグマ)マーク」の有無や、防水性能の仕様、バックルの形状などに違いがあります。
特に後期のモデルは、造り込みが現代的な水準に近づいているため人気が高く、相場も高めに推移する傾向がありますね。
自分の生まれ年の個体を探すといった楽しみ方ができるのも、ロングセラーモデルならではの醍醐味かなと思います。
レディースモデルのサイズ感と特徴

「エリプスは男性の時計」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実はレディースモデルも非常に奥深い世界が広がっています。
代表的なRef.4830などは、メンズモデルのデザインコードをそのまま凝縮したような美しさがあり、女性の手首をジュエリーのように彩ります。
女性用のドレスウォッチ市場では、実用性の観点からクォーツムーブメント(電池式)の需要が圧倒的に高いのですが、そこはさすがパテック フィリップ!
搭載されているクォーツムーブメント(Cal. E15など)は、機械式時計と同じように地板にペルラージュ装飾が施され、構成部品の一つひとつが丁寧に面取りされています。
サイズ感に関しては、メンズモデルよりも一回り小さいですが、黄金比のプロポーションは完全に維持されています。そのため、ご夫婦やパートナーとペアでエリプスを愛用されている方も少なくありません。
最近では、あえて少し大きめのメンズサイズ(Ref.3548など)を女性が着ける「ボーイズサイズ使い」もトレンドになっており、ジェンダーレスに楽しめるデザインとしての評価も高まっている印象です。
シンプルなデザインゆえに、ダイヤモンドを取り巻いたモデルや、特殊なブレスレットモデルなど、バリエーションが豊富なのも女性にとっては嬉しいポイントですね。
手巻きと自動巻きムーブメントの違い
時計好きとしてどうしても気になってしまうのが、ケースの中に収められたムーブメント(機械)の話ですよね。
エリプスの歴史は、美しさを損なわないための「薄型化への挑戦の歴史」でもあります。主に知っておくべきは、以下の2つの傑作キャリバーです。
Cal. 23-300(手巻き)
主に1960年代~70年代の初期モデル(Ref.3548等)に搭載されていた手巻きムーブメントです。
パテック フィリップの歴史上でも最高傑作の一つと称される名機で、美しいブリッジの形状や、精度を司るジャイロマックス・テンプの採用など、手抜きが一切ありません。
すべての個体に「ジュネーブ・シール」が刻印されており、50年経った今でもメンテナンスさえすれば現役の精度を叩き出します。毎朝リューズを巻くという儀式を楽しみたい方には、こちらがおすすめです。
Cal. 240(自動巻き)
1977年に登場し、Ref.3738以降の主力となったのが、超薄型自動巻きムーブメント「Cal. 240」です。
このムーブメントの凄さは、22金(K22)製の小さなマイクロローターをムーブメントの基板の中に埋め込んでいる点にあります。
通常、自動巻きはローターが乗っかる分だけ厚くなりますが、この構造により手巻き時計並みの薄さ(厚さ2.53mm)を実現しました。
現在でもノーチラス(Ref.5712)やパーペチュアルカレンダーなどのベースとして使われている現役のレジェンド機です。
「薄くてエレガントなのに、実用的な自動巻き」という矛盾する要素を両立させたCal. 240搭載モデルは、忙しい現代のビジネスマンにとって理想的な選択肢と言えるでしょう。
ブルーゴールド文字盤の美しい色彩

エリプスを象徴するカラーといえば、あの吸い込まれるような「ブルー」ですよね。
実物をご覧になったことがある方は分かると思いますが、あれは単なる青色のペイントではありません。
パテック フィリップ独自の技術によって生み出された「ブルー・ゴールド(Blue Gold)」という特別な文字盤なのです。
1960年代に開発されたこの技術は、文字盤のベースとなる18金(K18)のプレートに対し、コバルトを真空蒸着させる(あるいは照射する)という化学的・物理的なプロセスを経て作られます。
メッキや塗装とは根本的に異なり、金そのものの色調を変化させているため、光の当たり方によって表情が劇的に変化します。
暗い場所では深海のようなミッドナイトブルーに、強い光の下では鮮烈なロイヤルブルーに輝くその様は
まさに「構造色」に近い美しさです。
さらに、その上から職人が手作業で真鍮ブラシを使い、放射状の筋目を入れる「サンバースト仕上げ」が施されています。
これにより、光が当たった瞬間に文字盤中心から外側へ向かって光の筋が走るような、ダイナミックかつ繊細な輝きが生まれるのです。
美しいブルーゴールド文字盤ですが、1970年代~80年代の初期製造分に関しては注意が必要です。
経年変化や温度変化によって表面のコーティング層に細かいヒビ割れが入る現象、通称「スパイダーダイアル(蜘蛛の巣状のクラック)」が発生している個体があります。
ロレックスなどのスポーツモデルでは、これを「希少なエラー」として珍重する文化もありますが、エレガンスを極めるエリプスにおいては、一般的に「劣化」とみなされ、資産価値を下げる要因になり得ます。
購入の際は、必ずルーペや拡大画像を使って、文字盤の表面状態をチェックすることを強くおすすめします。
パテック フィリップ エリプスの資産価値と購入
さて、ここからは少し現実的な「お金」と「価値」の話をしましょう。
高級時計を資産として見る側面が強まっている2025年現在、エリプスは投資対象としてどう評価すべきなのでしょうか?
現行モデルの価格動向や、購入後の維持費、そして競合モデルとの比較など
私のリサーチに基づいた分析をまとめてみます。

定価の推移と現行モデルの価格
まず、現行モデルの価格設定ですが、やはり「雲上ブランド」の名に恥じない高価格帯に位置しています。
2026年現在、ラインナップの中核をなすプラチナモデル(Ref.5738P)やローズゴールドモデル(Ref.5738R)は、定価ベースで数百万円後半からという水準です。
近年のパテック フィリップは世界的なインフレや原材料費の高騰を受けて、定期的に価格改定(値上げ)を行っています。
特にエリプスは、ケースや裏蓋だけでなく、文字盤のベースプレートやインデックスに至るまで18金やプラチナといった貴金属をふんだんに使用しているため、金相場(ゴールドマーケット)の上昇がダイレクトに定価へ反映されやすい傾向にあります。
かつては「ノーチラスが買えないからエリプスを見る」という消極的な選択肢だった時代もありましたが、現在ではメーカー側もエリプスのブランド価値向上に力を入れており、定価自体がエントリーモデルという位置づけではなく、ハイエンドなドレスウォッチとして再定義されています。
公式の定価情報は常に変動するため
購入を検討する際は必ず最新の情報を確認する必要があります。
(出典:パテック フィリップ公式サイト『ゴールデン・エリプス』)
投資対象として値上がりは期待できるか
投資的な視点で見た場合、正直に申し上げますと、エリプスはノーチラスやアクアノートのように「正規店で買って店を出た瞬間に定価の3倍、4倍で売れる」といった爆発的なキャピタルゲインを狙える投機商材ではありません。
もしあなたが短期的な転売益だけを目的に時計を探しているのなら
他のモデル、あるいは他のブランドを検討した方が賢明かもしれません。
しかし、私はエリプスを「極めて賢実な資産(Smart Money)」だと捉えています。
その理由は「安定性」にあります。流行に乗って急激に価格が高騰したモデルは、ブームが去れば暴落するリスクを孕んでいますが、エリプスのように50年以上もデザインが変わらず、一定のファン層に支えられているクラシックモデルは、価値がゼロになったり半減したりするリスクが極めて低いのです。
また、前述の通り金無垢素材を贅沢に使用しているため、時計としての価値に加えて「貴金属(ゴールド)としての資産価値」も内包しています。
インフレヘッジとしての側面も持ち合わせているため、長期的に保有して楽しんだ後に、購入価格と同等かそれ以上で次の世代へバトンタッチできる可能性が高い。
そういった意味で、非常に堅実な「守りの資産」と言えるのではないでしょうか。
愛好家からの評価が高い理由

時計に詳しい愛好家やコレクターほど、最終的にエリプスを高く評価する傾向があります。
その大きな理由の一つに、市場における「相対的な割安感」が挙げられます。
例えば、エリプス(Ref.3738など)に搭載されている「Cal. 240」というムーブメントは、現在市場価格が1000万円を軽く超えているノーチラス(Ref.5712)にも搭載されています。
つまり「心臓部」は1000万円級の超人気モデルと同じ最高級ムーブメントでありながら、外装にはより多くの金無垢を使用しているにも関わらず、中古市場では200万~300万円台で購入可能(※状態による)な個体が存在するのです。
この事実に気づいた時
「パテック フィリップの時計を純粋に楽しむなら、エリプスほどコストパフォーマンスが高いモデルはない」という結論に至ります。
客観的に見てスペックと価格のバランスが「過小評価(Undervalued)」されている状態にあるため、今後さらに評価が見直されるポテンシャルを秘めているとも言えるでしょう。
昔のモデルが安い理由と購入注意点
中古市場を検索していると、時折100万円台前半で販売されているヴィンテージのエリプス(Ref.3548など)を見かけることがあります。
「パテックがこの値段!?」と飛びつきたくなりますが、安いのには明確な理由があり、購入には慎重な判断が必要です。
初期のモデルは現代の基準からするとかなり小ぶりで、男性が着けると華奢すぎると感じる場合があります。
また、昔のモデルは「スナップバック(はめ込み式裏蓋)」構造が主流で、防水性は皆無に等しいです。
日本の高温多湿な夏場に着用したり、手を洗う際に水しぶきがかかったりするだけで、内部に湿気が入り込み、文字盤の変色やムーブメントのサビを引き起こすリスクがあります。
特に注意が必要なのが、金属ブレスレットと時計ケースが一体化しているデザインのヴィンテージモデルです。
これらは多くの場合、サイズ調整のために「ブレスレットを物理的に切断する」必要があります。
つまり、一度短くカットされた個体は、二度と元の長さに戻せません。
もし、前のオーナーが手首の細い人で、あなたの手首周りよりも短くカットされていた場合、その時計は装着することすらできません。
コマを足して伸ばすことも構造上不可能なケースが多いため、一体型モデルを購入する際は、必ず実物を試着するか、長さをミリ単位で確認することが不可欠です。
オーバーホール費用と維持の注意点
「パテック フィリップは一生モノ」と言われますが、それは適切なメンテナンスを行い続けることが前提です。
購入後のランニングコストについても、事前に把握しておく必要があります。
パテック フィリップは「永久修理」を宣言しており、どんなに古い時計でも修理を受け付けてくれますが、その費用は決して安くありません。
| サービス内容 | 概算費用(税込目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 電池交換(クォーツ) | 約2.7万円~ | パッキン交換、防水検査含む |
| オーバーホール(手巻き) | 約18.4万円~ | 部品交換が必要な場合は別途加算 |
| オーバーホール(自動巻き) | 約20.4万円~ | マイクロローター摩耗時はさらに高額に |
| ヴィンテージ修復 | 見積もりベース | スイス本国送り。期間は半年~1年以上 |
特に、安く購入したヴィンテージモデルの状態が悪く、スイス本国での修復(レストア)が必要になった場合、修理費用だけで数十万円、期間も1年以上かかるというケースも珍しくありません。
「憧れのパテックを安く手に入れたつもりが、修理費を含めると現行の中古品が買える値段になってしまった」という事態を避けるためにも
購入時には「正規メンテナンスを受けた履歴があるか(修理明細書があるか)」を確認するのが鉄則です。
パテック フィリップ エリプスを選ぶ意義

長くなりましたが、最後にまとめとして、私が考える「今、エリプスを選ぶ意義」についてお話しします。
複雑な機能をこれ見よがしに自慢するためでも、分かりやすいロゴで他者を圧倒するためでもありません。
自分自身が「黄金比」という普遍的な美の法則を理解し、その完璧なバランスを手元で密やかに楽しむ。
そんな成熟した精神性を持つ大人にこそふさわしい時計です。
「ノーチラスが買えないから仕方なく」という理由で選ぶべき時計ではありません。
むしろ、パテック フィリップというブランドが持つ「伝統」「革新」「美学」のすべてが、一切の無駄を削ぎ落とした最も純粋な形で結晶化しているのがエリプスである。
そう理解できた時、この時計はあなたの人生における最良のパートナーになってくれるはずです。
私もいつか、この時計が似合うような、内面から輝く大人になりたいものです。
この記事が、皆さんの運命の一本との出会いに少しでも役立てば嬉しいです。
※本記事の価格や相場情報は2026年時点の執筆者調べによる目安です。実際の市場価格は為替や需給バランスにより常に変動します。また、投資に関する判断は最終的に自己責任で行ってください。正確なスペックや最新情報は必ずパテック フィリップ公式サイトや正規販売店でご確認ください。


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