今回は、彗星のごとく現れては瞬く間に伝説となってしまった、あの特別なモデルについてお話ししようと思います。皆さんもきっと気になっているであろう「ロレックス デイトナ ル・マン(Ref.126529LN)」に関する話題です。
2023年の6月、ル・マン24時間レースの100周年という記念すべきタイミングで発表され、世界中の愛好家を驚愕させました。
しかし、その衝撃も冷めやらぬまま、わずか1年足らずで廃盤となり、今や「現代のユニコーン」とも呼べる存在になっています。
2024年、そして2025年の市場においてその資産価値がどうなっているのか?
あるいは定価と実勢価格の乖離がどれほど深刻な状況になっているのか?
気にしている方も多いのではないでしょうか。
私たちが長年憧れてきた「ポール・ニューマン」のデザインコードを正統に受け継ぎつつ、ホワイトゴールドの重厚感をまとったこの時計は、単なる工業製品の枠を超え、もはや芸術品の領域に達しているようにも思えます。
もし運良く手に入れられたら、その重さや所有する喜びも含めて、人生における大きな資産となることは間違いありません。
この記事では、そんな幻のモデルの魅力や将来性について、私なりの視点と熱量で徹底的に深掘りしていきます。
- わずか1年未満で生産終了となったRef.126529LNの希少性と廃盤の理由
- ポール・ニューマンダイアルを現代に蘇らせたデザインの歴史的背景と意義
- ル・マン24時間レースのために開発された専用ムーブメントCal.4132の技術的特徴
- 定価の数倍で取引される現在の市場価格と、2025年以降の資産価値展望
ロレックスのデイトナ ル・マンに見る驚きの特徴

ここでは、Ref.126529LNがなぜこれほどまでに世界中の時計ファンを熱狂させたのか、その具体的なスペックやデザインの秘密に迫ってみたいと思います。
単なる「記念モデル」という言葉では片付けられない、ロレックスの本気度と歴史への敬意がひしひしと伝わってくるディテールが満載なんですよね。
一つひとつ紐解いていきましょう。
126529LNのスペックを徹底解説
まずはこのモデルの基本スペックから詳細に見ていきましょう。
Ref.126529LNは、2023年のル・マン24時間レース100周年を記念して発表されたモデルですが、その仕様は通常のデイトナとは明確に一線を画しています。
ロレックスがこの一本にかけた「特別感」は
カタログスペックを眺めるだけでも伝わってくるほどです。
ホワイトゴールドという素材の選択
最大の特徴の一つは、ケースとブレスレットに採用された18Kホワイトゴールド(WG)素材です。
デイトナにはステンレススティール(SS)モデルも存在し、その軽快さや実用性の高さももちろん魅力的なのですが、ホワイトゴールド特有のしっとりとした輝きと、肌に吸い付くような質感はやはり別格です。
一見するとステンレスのようにも見えるため「悪目立ちしない」というステルス性がありながら、知る人が見ればその深みのある色艶で貴金属だと分かる。この奥ゆかしさが大人の所有欲を深く満たしてくれるんですよね。
サイズは伝統的な40mm径を維持していますが、厚みについてはシースルーバック採用の影響もあり、通常のSSモデルよりわずかに存在感があります。
しかし、ラグの形状やケースサイドの設計が絶妙で、手首への収まりは非常に良好です。
異例のシースルーバック(トランスパレントバック)

そして、何と言っても見逃せないのが、裏蓋がシースルーバック(トランスパレント)仕様になっている点です。
これは、2023年のモデルチェンジでプラチナモデル(Ref.126506)に初めて採用された仕様ですが、ゴールドモデルで採用されたのはこのル・マンモデルが初でした(発表当時)。
ロレックスは長年「堅牢性」を最優先するために裏蓋をソリッド(金属の塊)にしてきましたが、ここに来てついに「ムーブメントを見せる」という方向に舵を切りました。
サファイアクリスタル越しに覗く精緻なメカニズムは、機械式時計を愛する者にとって最高の酒の肴になります。
防水性能についても、シースルーバックでありながらしっかりと100m防水を確保しているのは
さすがロレックスの実用主義といったところでしょう。
- ケース素材は高級感あふれる18Kホワイトゴールド(WG)
- ロレックスのスポーツモデルでは極めて珍しいシースルーバックを採用
- 100m防水やイージーリンク(約5mm延長機能)などの実用スペックは完備
現代に蘇るポールニューマンの意匠
多くのファンがこのモデルを見て最初に息を呑んだのは、やはりそのダイアルデザインではないでしょうか。
私自身も最初に公式画像を見たときは、思わず「まさか!」と声を上げてしまいました。
それほどまでに、このデザインの復活は衝撃的だったのです。
伝説の「エキゾチック・ダイアル」とは

インダイアル(文字盤の中にある3つの小さな時計)の目盛りに注目してください。
通常のデイトナはシンプルなバータイプの目盛りですが、このモデルでは先端が四角い「スクエア型」のデザインになっています。
これこそが、ヴィンテージロレックスの世界で「聖杯」とも呼ばれ、数千万円から時には数億円で取引されるポール・ニューマン・ダイアル(正式名称:エキゾチック・ダイアル)の最大の特徴なのです。
かつて俳優のポール・ニューマンが愛用したことからその名がついたこのデザイン。
長年、コレクターの間では神格化されてきましたが、ロレックス公式がこのデザインを「復刻」として現代のモデルに採用することは、これまでの歴史の中でほとんどありませんでした。
「逆パンダ」配色の妙
カラーリングも絶妙です。
ブライトブラックのサンレイ仕上げ文字盤に、ホワイトのインダイアルという組み合わせ。
これは通称「逆パンダ」と呼ばれ、精悍で引き締まった印象を与えます。
ヴィンテージのポール・ニューマンモデル(Ref.6263やRef.6239など)の雰囲気を色濃く残しつつ、現代的な高級感を加えた仕上がりは、まさに「ネオ・ヴィンテージ」の最高傑作と言えるでしょう。
このダイアルを見るたびに、モータースポーツの歴史とロレックスの伝統が交差するロマンを感じずにはいられません。
記念ベゼルの赤い100が持つ意味
デイトナの顔とも言えるタキメーターベゼルにも、このモデルならではの特別な「遊び心」と「敬意」が隠されています。
一見すると通常の黒いベゼルに見えますが、ここにもマニア心をくすぐるディテールがあるんです。
「赤」に込められた100年の歴史

ベゼル素材は、ロレックスが誇るハイテク素材「ブラックセラクロム」
極めて硬く、傷に強く、紫外線による退色もしないという実用性の塊のような素材です。
そのタキメーター目盛りをよく見てみると、「100」の数字だけが鮮やかな赤いセラミックで埋められていることに気づきます。
これは言わずもがな、ル・マン24時間レースの100周年(Centenary)を表しています。
(出典:ル・マン24時間レース公式サイト)
ロレックスのデザインコードは基本的に非常に保守的で、機能に直結しない装飾や、分かりやすいアニバーサリー要素を入れることは極めて稀です。
それだけに、この「赤い100」が持つ意味は非常に大きいのです。
全体のモノトーンで統一されたストイックなデザインの中で、この小さな赤が一点、情熱的なアクセントとして機能しています。
時計を見るたびに「特別なモデルを所有している」という優越感を静かに、しかし確実に刺激してくれるポイントだと感じます。
技術的な難易度
実は、セラミックベゼルの一部だけ色を変えるというのは、技術的に非常に高度なプロセスを要します。
ロレックスは「GMTマスターII」の赤青ベゼル(ペプシ)などでその技術力を証明してきましたが、この小さな数字一つに異なる色のセラミックを充填し、焼結させ、フラットに研磨するという工程には、並々ならぬ手間がかかっているはずです。
専用ムーブメントCal.4132の革新
見た目だけでも十分すぎるほど魅力的なのですが、中身(ムーブメント)もすごいのがこのモデルの恐ろしいところです。
通常のアニバーサリーモデルであれば、文字盤やベゼルのデザイン変更だけで済ませることも多いのですが、ロレックスは違いました。
24時間レースのための「24時間計」
通常のデイトナに搭載されている最新ムーブメントは「Cal.4131」ですが、ル・マンモデルの「Cal.4132」は何が違うのでしょうか?
最大の違いは、9時位置にあるインダイアル(積算計)の機能です。
通常のデイトナではここは「12時間積算計」ですが、Cal.4132では「24時間積算計」に変更されています。
これは、24時間走り続ける「ル・マン24時間レース」の全行程を計測可能にするための、極めて実戦的かつ象徴的な機能変更です。
既存のムーブメントをベースにしつつ、特許取得済みの独自の「遊星歯車減速機構」を組み込むことで、ムーブメントのサイズや厚みをほとんど変えることなく、積算計の針の回転速度を半分(24時間で一周)にすることに成功しています。
技術的な話をすると、この機構はわずか7つの部品で構成されています。
通常、こうした機能追加はムーブメントの肥大化を招くものですが、ロレックスは省スペースかつ高効率な設計でこれをクリアしました。
まさに「技術のロレックス」の面目躍如ですね。
仕上げの美学:ロレックス・コート・ド・ジュネーブ
また、シースルーバックから見えるムーブメントの仕上げも特別です。
「ロレックス・コート・ド・ジュネーブ」と呼ばれる独自の装飾がブリッジに施されており、従来の縞模様の間に微細なポリッシュ溝を加えることで、光を受けると立体的に輝きます。
さらに、自動巻きのローター(回転錘)は18Kイエローゴールド製で、肉抜き加工(カットアウト)が施されています。
これにより、クロノグラフの心臓部であるコラムホイールや、テンプの動きをより広く鑑賞できるようになっているのです。
72時間のロングパワーリザーブや、日差-2~+2秒という超高精度(Superlative Chronometer)も健在で
実用時計としても世界最高峰の性能を誇ります。
ホワイトゴールド製ケースの重量感
Webやカタログのスペックだけでは伝わらない、実際にこの時計を手にしたオーナーだけが味わえる感覚、それが圧倒的な「重量感」です。
私たちが普段慣れ親しんでいるステンレス製のデイトナ(Ref.116500LNや126500LN)は、ブレスレット込みで約140g前後と、非常にバランスの良い重さです。
しかし、金無垢(ホワイトゴールド)製であるRef.126529LNは違います。
フルコマ(ブレスレットのコマを全て付けた状態)では、およそ200gオーバー(約214g程度)にもなります。
これは、手首にスマートフォン1台分以上の重さが常に乗っているような感覚に近いと言われます。
重さは「所有する喜び」か「疲労」か
この重量感をどう捉えるかは、好みが分かれるところかもしれません。
「重すぎて日常使いには疲れる」という意見も確かにあります。
しかし、多くのオーナーは、このずっしりとした重みを「高級素材を身に纏っている証」として肯定的に捉えているようです。
手首を動かすたびに感じる確かな存在感。
「今、特別な時計と共に時を刻んでいるんだ」という実感が、物理的な重さとなって伝わってくる。
また、最新のオイスターブレスレットは人間工学に基づいて設計されており、重量バランスが非常に良いため、数値ほどには重さを不快に感じないという声も多いです。
ただし、長時間のデスクワークでキーボードを叩く際などは、バックルが当たって傷つくリスクも含め、一度外したくなる場面もあるかもしれませんね。
ホワイトゴールドはステンレスに比べて素材硬度が低く、柔らかいため、使用に伴う小傷(スクラッチ)がつきやすい傾向にあります。
特に鏡面仕上げ(ポリッシュ)部分は傷が目立ちやすいので、愛用する際は「傷も思い出(味)」と割り切る心の余裕が必要かもしれません。
ロレックスのデイトナ ル・マンにおける資産価値
さて、ここからは少し現実的でシビアな話、お金の話にも触れていきたいと思います。
このモデルがなぜ「幻」と呼ばれるようになったのか?
そして現在の市場価格がどれほど異常な事態になっているのか?
投資的な視点も含めて冷静に分析してみましょう。
わずか1年で廃盤となった背景
Ref.126529LNがこれほどまでに神格化され、伝説となった最大の要因。
それは、スペックやデザインもさることながら、その生産期間の異常な短さにあります。
2023年6月のル・マン24時間レース開催中に突如発表され、翌年の2024年4月に開催された時計見本市「Watches & Wonders 2024」のタイミングで、ロレックスの公式サイトから静かに姿を消しました。
意図された希少性?
実質的な販売期間は、わずか10ヶ月から1年未満と推測されます。通常、ロレックスのモデルサイクルは短くても5年、長ければ10年以上続くのが通例です。
それを考えると、この短さは明らかに異例です。おそらく、最初から「ル・マン100周年記念イヤー限定」という位置づけで企画されたモデルだったのでしょう。
ただでさえ生産数の少ない貴金属モデルであり、さらに製造ラインを圧迫する専用ムーブメント(Cal.4132)を搭載していたわけですから、世界的に見ても流通量は極めて少ない(数百本レベルという噂も)と考えられます。
この「欲しくても絶対に正規店では買えない」「市場にモノがない」という枯渇感が、価格高騰の最大の要因となっているのです。
最新の定価と実勢価格の推移

では、具体的な価格について見てみましょう。
このモデルの最終的な国内定価は、約740万円(税込)ほどでした。
一般人の感覚からすれば、時計一本に700万円超えというのは十分に高額で、高級車が買える価格帯です。
発売直後の2023年後半には、既に2000万円台後半での取引が見られ、初期需要の高さを示していました。
しかし、2024年4月に廃盤が決定的となった瞬間、市場は爆発的な反応を見せました。
2025年現在、状態や付属品の有無にもよりますが、中古・未使用品市場では3000万円から4000万円前後で推移しており、一部の海外オークションや委託販売ではそれ以上の値を付ける個体もあります。
定価の約4倍から5倍。つまり、定価で購入できた幸運なオーナーは、その瞬間に2000万円以上の含み益を手にしたことになります。これはもはや時計投資という枠を超え、宝くじに当たったような現象と言えるかもしれません。
| 時期 | 定価(税込) | 実勢相場(目安) | プレミア率 |
|---|---|---|---|
| 2023年6月 (発売時) | 約672万円 | — | — |
| 2024年4月 (廃盤判明) | 約740万円 | 3500万円 ~ 4500万円 | 約500% |
| 2025年現在 | – | 3000万円 ~ 4000万円 | 約450% |
※価格は市場の動向、為替(円安・円高)、個体の状態により常に大きく変動します。上記はあくまで過去のデータおよび執筆時点での市場調査に基づく目安です
2025年における市場価格の予想
「バブルはいずれ弾ける」とよく言われますが、2025年に入っても、このデイトナ ル・マン(Ref.126529LN)の価値が暴落する気配は今のところ感じられません。
むしろ、世界の富裕層やコレクターたちが「市場にあるうちに確保しておきたい」と動いている印象さえあります。
もちろん、世界的な経済リセッションや為替の急激な変動によって、一時的な価格調整が入る可能性は否定できません。しかし、このモデルには「生産数が物理的に増えない」という絶対的な強みがあります。
供給が増えることは二度とないのです。
そのため、短期的には3000万円台での横ばいや微減があったとしても、10年、20年という長期スパンで見れば、右肩上がりで推移していく可能性が極めて高いと私は予想しています。
特に、シールが残っているような完全未使用品(デッドストック)や、付属品が全て揃った完品は、今後ますます入手困難になり、美術館級の価値を持っていくでしょう。
通常モデルとの違いと投資評価

ここで、現在販売されている通常のデイトナ(ステンレスモデル Ref.126500LN)と比較してみましょう。Ref.126500LNも超人気モデルであり、正規店での購入は困難を極めます。実勢価格も定価の2倍以上(400万円~500万円台)で取引されていますが、ル・マンモデルの投資評価はそれとは「別次元」です。
「消費される時計」と「保存される資産」
通常モデル(Ref.126500LN)は、カタログに掲載され続けている限り、毎年一定数が生産され、市場に供給され続けます。つまり、将来的にはある程度の数が市場に流通することになります。
一方、ル・マンモデル(Ref.126529LN)は既に供給がストップしています。
「ポール・ニューマンダイアル」「専用ムーブメント」「シースルーバック」「1年未満の生産」という、コレクターが喉から手が出るほど欲しい要素が全て詰まっています。
これは、もはや「腕時計」というよりも
ピカソの絵画やヴィンテージワインと同じ「投資用資産」としての側面が強いです。
通常モデルが「実用時計の頂点」だとすれば、ル・マンモデルは「コレクションアイテムの頂点」と言えるでしょうね。
ロレックスのデイトナ ル・マンの将来性
最後に、このモデルの将来性についてまとめておきたいと思います。
私はこのRef.126529LNが、将来的に「ネオ・ヴィンテージ」の最高峰として、腕時計史に深くその名を刻む存在になると確信しています。
かつて1960年代~70年代に生産された「ポール・ニューマン」モデル(Ref.6239など)は、当時は不人気モデルでしたが、長い年月をかけて評価され、今では数千万円、数億円という価値を持つに至りました。
この現代版ポール・ニューマンであるRef.126529LNは
生まれた瞬間からその価値を約束された稀有なモデルです。
もし今、3000万円、4000万円という資金を用意でき、この時計を手に入れるチャンスが目の前にあるのなら、それは単なる贅沢な買い物ではありません。
歴史の一部を所有し、それを次の世代へと受け継いでいくという、文化的な責任と喜びを伴う行為なのかもしれません。
この時計は、これから先も色褪せることなく、むしろ時を経るごとにその輝き(と価値)を増していくことでしょう。
※本記事で紹介した価格情報や将来予測は、執筆時点での市場データや個人の見解に基づくものであり、将来の価値を保証するものではありません。時計の購入や投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。正確な最新情報は、信頼できる専門店や公式サイト等でご確認ください。


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